人生後半のイベントに備えるシリーズ「親の介護」

ライフイベントについてシリーズでお届けします。第1回は「親の介護」です。

FP中根

「今は元気だから」と考え、先送りしがちになるのが親の介護です。
ただいつ介護をすることになるか、介護するのはだれか、必要な期間はどのくらいになるのか、お金はどうすればよいかなど解らないことだらけです。

ですが親子とも後悔することのない介護をするためには、親が元気なうちから準備をすることが必要です。

小さな異変を見過ごさない

誰でも、「うちの親はまだ元気だ」と思いたいものです。
ですが、小さな異変を見過ごすことは危険です。下記のチェックリストに当てはまるものはいくつあるでしょうか。

  • 外出が週1回未満である
  • 預金の出し入れをしていない
  • 階段を上るのに手すりや壁を伝っている
  • 何かにつかまらないと椅子から立ち上がれない
  • 半年で3キロ以上体重が減った
  • お茶や汁物を飲むとむせる
  • 同じ話を繰り返すことがある
  • 今日の日付を把握できていない

2つ以上該当する場合は、異変が起き始めていると考えてください。

近くに住んでいてこまめに会っている場合は、異変に気付かないことが多いので気を付けてください。

また、親が遠方に住んでいる場合は帰省した時にチェックリストに該当するか確認することをお勧めします。

家族で抱え込まない

親の介護で一番してはいけないことは、「家族で抱え込む」ことです。自分達(子供・家族)が頑張れば親の介護はなんとかなるという考えは捨てましょう。

また、この記事を読んでいるのが男性の場合、安易に「介護は妻に任せればよい」と考えがちです。ですが、突然介護を任される奥様は困惑します。介護に関する十分な知識や経験があるならばまだよいですが、そうでない場合、慣れない介護により体に無理が生じ体調を崩すこともあります。ひいては夫婦関係に亀裂が生じ離婚というケースもあり得ます。

介護される側としても、「自分の下(しも)の世話を子供に見てもらうのは抵抗がある」と考える親がほとんどです。
また、遠くの故郷に住んでいる親を呼び寄せる場合は、介護のためだとは言え住み慣れた土地を離れ心理的にもかなりのプレッシャーを与えることになります。

介護は抱え込まず、お金を払ってでもプロの手を借りることが最適です。

地域包括支援センターに相談しましょう

地域包括支援センターは、「介護が必要な状態かも」と思ったら最初の相談窓口になります。利用は無料で、全国におよそ4300カ所あります。ほぼ中学校の校区ごとに一つある計算になります。

相談する際は、以下の項目をあらかじめメモして準備しておくとよいです。

  1. 1.でチェックした「小さな異変」
  2. 親の生活で心配なこと、困っていること
  3. 親の現在の健康状態
  4. 子供たちの住所や現状
  5. 親の近くにいる知人・友人などの存在

介護が必要になった状況で初めて地域包括支援センターを利用するという事も可能ですが、早めに相談したほうがより多様な情報を知ることが出来ます。情報が多いことは介護する家族にとっても選択肢が増えるという事につながります。

また、介護にはケアマネージャーやヘルパーなどの外部のサポートは必須です。ともすると高齢者は外部のサポートに拒否感を感じることが多くありがちです。この嫌悪感を軽くするためにも、早めに地域包括支援センターとコンタクトを取り、センターが実施する「元気な高齢者」向けのプログラムを受けて親の心理的なハードルを下げることも必要でしょう。

親の介護の費用は誰が出すのか

親の介護費用は親が負担するようにするのが鉄則です。
最終的に夫と妻の各両親の4人分の介護をすることになることも考えられます。子供がある親の介護費用を負担すると、それ以外の親の介護費用やその分担をめぐって夫婦の間や、兄弟姉妹の間でトラブルになる事があります。
また、介護費用を無理して負担した場合、家計に深刻なダメージを与えることも考えられます。

介護の費用は、「いくらかかるか」ではなく「いくらかけられるか」という視点が必要です。

この視点を持つためには、まずは親の年金の額と、貯金その他の資産を知ることが始めです。ただ親から拒否された場合に、無理にでも聞き出すことは法に触れる可能性がありますので注意してください。

次に、生活費としていくら使っているかを確認してください。交際費も確認できるとより良いです。

試算なので、「親が100歳まで生きた場合」を想定し、100歳までの年数で資産額を割ります。それに1年分の年金額を加え、生活費と交際費を引きます。残った額が介護にかけることが出来るお金になります。
予備費として5万円から10万円を別に引いておくことも、可能ならばしてください。

<例>
親が80歳、資産は1600万円、年金は手取り年200万円、生活費などは月12.5万円の場合

1600万円÷(100-80)+200万円-(12.5万円×12)-10万円=120万円

この場合は年120万円、月換算で10万円まで介護費用をかけられるという事になります。

また、資産や年金などのプラスの財産だけでなく、ローンなどの負債額も併せて知るようにしましょう。さらに、介護状態になると医療保険や生命保険を受け取れる可能性もあります。加入している保険の内容や保険証券の保管場所についても聞いておくと良いです。

介護費用を抑えるために知っておくべきこと

まず第一に確認したいことは、「親が住民税を払っているか」という点です。

住民税は、65歳以上で一人暮らしの場合は、年金収入が年155万円以下の場合は課税されません。
また、専業主婦の母親が一人暮らしで年金を受け取っている場合等の年金は「遺族年金」であることが多いです。この遺族年金は支給額にかかわらず非課税になります。また、障害があることにより支給される障害年金も遺族年金と同様に非課税の年金です。

介護負担の負担上限額は、一般は4万4000円ですが、住民税非課税世帯は2万4600円となります。さらに介護費用と医療費の合算が下表の負担上限額を超えた場合、「高額介護合算医療費」として還付されます。

年収による区分 医療費や介護費の負担額上限
(世帯単位)
一般(年収 155万円超から約370万円) 56万円
Ⅱ 住民税非課税世帯(下記Ⅰ以外) 31万円
Ⅰ 住民税非課税世帯
(介護サービス利用者が1人のみ、かつ年収80万円以下等)
19万円

※年収が約370万円を超える場合は「現役並み」とされます。

また、住民税を払っている場合でも、役所から送られている「扶養控除申告書」を正しく記載して返送していない場合が多くみられます。夫と死別した妻ならば適用できる「寡婦控除」や、要介護度4以上だと認められることが多い「障害者控除」は適用される可能性が多い控除です。

仕事を辞めないで親の介護をする

特にプライベートにかかわることなので、「親の介護をしているなんて会社に言えない」と考える方は多くいます。仕事をする上で介護はかなりの負担になると思われますが、抱え込んで会社には黙ってしまい、結局やり繰りすることが出来ず離職に追い込まれる方もいます。

介護のために仕事を辞めた人が再就職した場合は、給料が約半分になるというデータもあります。会社員ならば、親を介護していることを会社に告げて、介護休業を始め様々な制度を上手に利用して介護離職を避けるようにしましょう。

会社員ならば、“介護休業”が93日間利用できます。
ともすると、この介護休業で「親の介護をしよう」と考えがちですが、それは誤りです。休業期間が満了しても介護の現状は変わらないまま離職するということになります。ですので、介護休業期間は「自分が介護に携わらなくても良い、介護の体制を築くための期間」と考えてください。

介護休業は、法令が変わり3回まで分割できるようになりました。そのため、親の状況により以下のように取得することが介護休業の賢い使い方になります。

  1. 親を入院先等から引き取り在宅介護するときに40日
    病院の退院対応、介護保険に関する申請や面談などの諸手続き、信頼できるケアマネージャー探し、介護対応できる住宅の改修などを行い在宅で介護できる体制を構築する。
  2. 在宅介護がいよいよ難しくなったときに20日
    老人ホームを見つけ、入所させるまで。
  3. 終末期に33日
    看取りをするため。

なお、介護休業の期間は原則として給料の支給はありませんが、「介護休業給付」を雇用保険から受けることが出来ます。支給額は直近半年の間の賃金総額を180で割った額の67%です。申請は会社の賃金額の証明が必要なため、普通は会社経由で行います。

介護に関する休暇を介護休業とは別に取得することもできますし、会社によっては福利厚生の一環で介護に関するサポートを受けられる仕組みがある会社もありますよ

FP中根